五月に入り,新緑の季節となりました。
山里には青葉若葉が溢れており,五月晴れとあいまって非常にすがすがしい季節と言えます。
この時期は旅行に出かけられる方も多いと思いますが,名立たる観光地は混雑が激しいため,行き先を工夫することも必要かもしれません。特に,高速道路のETC割引制度がスタートして,所によっては例年以上の渋滞が発生しているようです。
その一方で,降ってわいたような「新型インフルエンザ」騒動が世界中を駆け巡っています。潜伏期間があるとしても,メキシコで感染者を確認してから一カ月も経たないうちに世界中に広がりを見せています。「製品」や「情報」だけではなく,「人」の移動もグローバル化していることが正に実感されます。そう言えば,最近は,ガイドブック片手の外国人旅行者が,鉄道の駅名表示と路線図を真剣に見詰めている光景に出くわすことがしばしばあります。
通信の世界でもグローバル化が急速に進展しております。例えば,携帯電話は,様々な機能が装備されるようになり,若者に限らず日常的に肌身離さず持ち歩くものになっていますが,国際的な「人」の移動が激しくなってきたのを受けて,携帯電話を海外でも使用できるようにしたい,あるいは,海外からの出張者,旅行者も日本国内で自国の携帯電話を使いたいとの要望は,ごく自然に高まってきており,仕様,規格の世界的な共通化が進んでいます。
実際には,国連の専門機関の一つである『国際電気通信連合(ITU)』という組織において仕様,規格などの標準化を行っておりますが,特に,無線機器の周波数を取り決める『世界無線通信会議(WRC)』の結果が,このグローバル化の動きに応じて非常に重要な位置づけとなってきました。それまで各国がそれぞれの実情に応じて決定していた無線機器の周波数が,世界的に共通化,統一化が図られることによって,ごく自然に地域を意識しない利用が実現できるようになってきました。
2007年10月に開催された前回の『世界無線通信会議(WRC‐07)』においては,光ファイバ並みの映像配信が可能となる「第4世代移動通信システム」の使用周波数帯が確保されたことから,今後の携帯電話を始めとした無線通信機器の開発競争が一層加速されていくものと考えられます。
情報通信の分野では,ネットワーク化が利便性向上に不可欠な要素ですので,このような世界的な仕様,規格の共通化,統一化の動きは,避けて通れないものであると言えます。また,この動きは,別の面で大きな変化を引き起こしていくことが確実です。
仕様,規格が世界共通となることで,新たな技術,サービスが一挙に世界的な広がりを見せる可能性が考えられます。意欲のある個人あるいはベンチャー企業が打ち出したアイデアが,瞬く間に世界中の人々の支持を得て普及していくという姿が現実化してきています。携帯端末上でピアノ演奏ができる「Finger Piano」などは,このような動きが現実となった端的な実例と言えます。
今回の「新型インフルエンザ」騒動は,グローバル化に伴うリスクを再認識させたものと言えますが,逆に,グローバル化のメリットも上記のように確実に進展してきています。次回の世界無線通信会議が予定されている2011年には,実用化された「第4世代移動通信システム」の共通基盤の上で,特徴ある革新的な技術,サービスが急激に増殖していることでしょう。