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地域密着の企業『株式会社 綿引無線』代表取締役のBLOG
タグチメソッドの精神に学ぶ!!
 


  7月となりました。

 

この時期としては珍しく台風の上陸がありましたが,今のところは比較的穏やかな梅雨といったところでしょうか。雨が降り続くと,山間部の土砂崩れや河川下流域の氾濫が心配になりますが,一方で,雨量が少ないと,夏の水不足を心配することとなり,考え出すとなかなか気が休まらない状態に陥ります。

それでも最近は少しずつですが,いざという時に備えた道具や食料品などの用意が整いつつあるように感じられ,我が家でも着実に防災意識は高まっているようです。

 

昨年発生した東日本大震災の復興作業も,この2月に発足した復興庁を中心に急ピッチで進められています。また,昨年10月に大きな被害を生じたタイでの洪水においても,徐々に復旧・復興が図られているようです。現地で被害を受けた日系企業の多くが,その場所に踏みとどまって操業を再開しているとのことで,改めて我が国の製造業の意気込みというものを感じます。

 

そのような中で,先日,“タグチメソッド”の生みの親である田口玄一さんが亡くなられたことが伝えられました。

 

かつて日本のモノづくりや品質管理が世界的に注目されていた時代に,その象徴的な位置づけとして輝いていたのが“タグチメソッド”でした。しかも,そのご本人が未だに元気で活躍されているということも知り,同じ時代に生きることができているという幸せ感を覚えたことも記憶しています。

 

当時,私が最も印象深かったのは,「品質管理は設計から始まる」と言う言葉であり,兎にも角にも“性能向上”一辺倒の意識しかもっていなかった未熟な開発者としては,正に“目から鱗が落ちる”思いでした。そして,その後機会があり,品質管理の業務に係わることとなって,この言葉の意味を骨の髄まで実感することとなりました。“性能向上”しか考えていない設計は,ともすれば“品質コスト”を押し上げてしまうことになるのです。それまで単なるスローガン的に捉えられることが多かった“TQC(Total Quality Control)”の本質的に意味するところと言えます。そして,その後も折に触れて“タグチメソッド”の奥深さに,大いに刺激を受けたものです。

 

設計作業そのものは,要求された機能を満足させるために,多面的で緻密な思考力が求められます。技術的な知識は勿論のこと,論理的な判断力も必要です。さらには,過去の経験に基づく知見を活かすことも忘れてはなりません。ただ,この段階はあくまでも頭の中でのイメージの世界であり,結局はそれを実際の形とすることが必要です。あまりにも厳しい精度を要求することは,モノづくりのコストを押し上げることに留まらず,品質管理の網に思わぬ綻びを生じさせる可能性を高めてしまいます。正に全体最適化を図らなければ,結局は最終的な目標が達成できないということです。

 

いま振り返ってみると,当時の我々のような経験の浅い技術者としては,目の前の課題解決に勢力をつぎ込むことしか余裕のない状態であり,ある意味では仕方のないことであったのかもしれません。ただ,そのような状況の中で,“タグチメソッド”に巡り合えたことは,極めて浅い経験を埋め合わせて余りあるぐらいの思慮深い気づきを与えてくれました。そして,それ以上に,実用的なモノを生み出すことの奥深さを考えさせてくれたとも言えます。

 

ただ,このような気づきを得たのは私だけではなかったようで,世界的にも“タグチメソッド”として広く知れ渡ることとなりました。日本では“品質工学”とも呼ばれていましたが,やはり“タグチメソッド”の呼び方の方が相応しい程に,そのメッセージは明確であったようです。そう言えば,同じような時期に,音楽の英才教育を行う“スズキメソッド”というのも有名でした。

 

“タグチメソッド”は,一般的には品質管理における問題解決の手法やツールを提供するものとの理解をされがちですが,その背景には,社会全体が最適化され,成長し続けていくという非常に大きな視点の想いが込められていたようです。そして,ここで言う“最適化”とは,社会に与える“損失を最小化”することと規定され,その枠組みを前提として手法やツールが活かされることになるという考え方の流れです。正に,人間社会を直視した大きな思考体系から導き出されたものだったのです。後に,そのような経緯を知り,理路整然とした一貫性が感じられる理由が納得できました。

 

日本製品が大量に海外に輸出され,我が国経済が高度成長を成し遂げていた時代の中で,敢えて人間にとっての理想的な社会を実現するという想いを追及し,その結果として“タグチメソッド”という形に結実させた業績に,改めて驚かされます。

 

現在,様々な社会的課題が浮き彫りになってきている中で,根本的な解決の糸口がなかなか見いだせない状況が顕著になってきています。目先の感情や損得に流されるのではなく,今一度,この“タグチメソッド”の精神に立ち返って,全体最適化への取り組みを行う必要があるのではないでしょうか。

 
 先ずは、我々自身がその精神を引き継ぎ,日常的なところから行動を起こしていくことが大切です。次の世代に引き継ぐためにも。

| - | 08:00 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark | 昨年の記事