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地域密着の企業『株式会社 綿引無線』代表取締役のBLOG
慰霊の8月を迎えて想うこと!!
 

 

8月となりました。

 

梅雨明けしたと思ったら,連日の猛暑が続いています。6月が比較的涼しかったために,梅雨明け後の気候は余計に暑く感じられるのかも知れません。私事で言えば,最近にわかに節電の意識が高まってきたことで,暑さに耐え忍ぶことが“クール”であるとの少し無謀な心理も働き始めたために,その影響も大きいようです。それに輪を掛けて,ロンドンオリンピックの競技からも目が離せない状態で,“寝苦しい夜”と“寝不足の朝”から解放されるためには,まだ少しの時間と辛抱が必要です。

 

今月は15日の終戦記念日を始めとして,様々な慰霊の行事が行われる月です。月遅れのお盆に合わせて帰省する方々も多いと思います。日々慌ただしく生活している中で,厳粛な気持ちで自らの系譜を辿ってみるよい機会とも言えます。現在の生活が,長い間に渡る古の人たちの営みの上に築かれてきたものであるということを改めて認識すると共に,これから次の世代へ引き継いでいく責任を感じるようにもなってきました。このような自分を意識するにつけて,着実に年齢を積み重ねているという実感が湧いてきます。

 

最近,「原発再稼働」に対する抗議行動の様子が頻繁に報道されるようになってきました。ある意味では,将来の世代に対する想いを感じての動きと言えるかもしれませんが,少し気にかかるのは,昨年経験した様々な“想定外の出来事”から何を学び取り,どのように活かしていくかという議論が十分なされているかという点です。

 

先月末に政府の事故調査・検証委員会が最終報告書を取りまとめたことで,東京電力福島原子力発電所の事故に関する組織的な調査に一応の区切りが付けられました。一足早く取りまとめられた国会事故調査委員会などの報告書と共に,これを単なる書き物として終わらせるのではなく,ここで指摘された内容を踏まえて,より実効性のある具体的な事故防止対策あるいは安全性向上対策として活用していくことが極めて重要です。

 

その意味で,政府事故調報告書の後書きとして記されている“委員長の7つの所感”は,分野が異なるとは言え技術に関わる我々にとっても大きな教訓として,改めて肝に銘じることが必要です。そして,これを受け止めた一人一人が具体的な行動を起こすことによって,所感で述べられているような,「100年後の評価にも耐えるような,より一般化・普遍化された知識にまで高める」ことが実現されることになると思います。このことが正に経験の積み重ねであり,技術の進歩と言えるのではないでしょうか。

 

そこで思い起こすのは,今から27年前の1985812日に発生した「日本航空123便墜落事故」です。発生当時の衝撃が非常に大きいものであったこともあり,暑い夏のイメージと重なってこの季節には必ず脳裏に浮かんできます。たびたび小説化や映画化されたことで,さらに印象を強くしているような気もします。航空機事故は一度発生すると犠牲者の数が多いこともあり,その原因究明に関しては大きな関心が寄せられます。

 

この日航機事故に関しては,事故から2年後の1987年に報告書が取りまとめられ,その中で,事故から7年前の1978年に発生した「しりもち事故」に伴う後部圧力隔壁の修理が不適切であったこと,さらにはその後の点検作業において異常を発見できなかったことなどの指摘がなされています。そして,これらの知見を踏まえて,航空機の運航会社や製造メーカーにおいて具体的な対策が図られることとなりました。

 

現在,羽田空港だけで年間約38万回という発着が繰り返されていることを考えると,航空機事故の教訓を確実に活かしていくことは当然としても,それ以上の未経験な事態も予測して対処していくための現場での苦労はたいへんなものと想像されます。航空機に関しては,金属の疲労破壊に関する大きな教訓とされた“コメット機の連続事故”以来,正に地道な努力が続けられてきた分野と言えるかもしれません。

 

このような中で,先日,『航空機事故に学ぶ〜危険学の視点』(小林忍著:講談社)という書籍が出版されました。著者は日本航空にて現場の整備を担当してこられた方で,それらの経験の中から「未来のトラブルに備えるための危険学」という切り口で,様々な分野への展開も想定してまとめられています。ここで述べられていることは,現場における具体的な経験と知見を踏まえた非常に示唆に富む内容となっています。

 

特に,「航空機事故を含めた代表的な事故は決して技術の最先端で起こっているのではなく,これを支える既知の領域で発生していること」,そうであるからこそ,「経営,組織,現業が,安全と言う立場から日々の業務にもう少し注意して慎重に扱っていたなら,防ぐ機会は複数回あるということ」が明らかにされている点は注目に値するものと言えます。

さらに,航空機側から他の産業分野を見渡した結果として,「航空機の設計,製造,運用の考え方,経年化対策,失敗例が他の分野でも活かせる」という認識は,より実効性のある効果的な取り組みを行う上で貴重な示唆を与えるものと考えられます。

 

今回の原子力事故に関しては,そもそも安全審査指針において,「長期間にわたる全交流動力電源喪失を考慮する必要はない」との判断に至った経緯など,まだまだ未解明な部分もありますが,一方で,想定以上の揺れに襲われた女川原発の被害が少ないことに関して,IAEA(国際原子力機関)が調査を開始したという状況でもあることから,客観的で冷静な判断の下に,効果的な対策を抜かりなく行うことが必要と考えます。

 

我々としても,今回明らかとなった教訓や知見を踏まえて,より一段高い技術力を発揮するための取り組みを行う決意が求められています。

 

様々な想いを抱きながら,いつもより暑い夏が続きます。

 

| - | 08:00 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark | 昨年の記事