CALENDAR

Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930   
<< November 2016 >>
NEW ENTRIES
ARCHIVES
LINKS
PROFILE
OTHERS
MOBILE
qrcode
 
地域密着の企業『株式会社 綿引無線』代表取締役のBLOG
新たな形で引継ぐ修験者の魂!!

 

 11月となりました。

 

 朝晩の肌に触れる風がようやく涼しく感じられるようにはなってきましたが,日中はまだまだ汗ばむような日もあるなど,季節感を忘れさせるような気候が続いています。先月末に富士山が初冠雪したとのことですが,これは60年前の1956年と並び最も遅い記録のようです。でも,季節は確実に冬に向かっており,ここは油断せずに寒さに耐えられる冬支度と心構えが必要です。

 

 我々が安住している地球の動きは気候の面だけではないようで,国内外で地震の被害が続いています。4月に発生した熊本地震の記憶がまだ生々しいところですが,先月21日には鳥取県中部地震が発生し,倉吉市を中心とした近隣地域で最大震度6弱を記録するなど,大きな被害が発生しています。また,海外においては,イタリア中部で8月に発生した大地震により多数の犠牲者が発生していますが,その後も繰り返し揺れが観測されているようです。鳥取県においても連日のように余震が続いており,ここは一刻も早い地震活動の終息と,日常生活の復旧を望むばかりです。

 

 今回の鳥取県中部地震については,これまで活断層として確認されていない地域が震源地となったということで,地震予知の難しさが改めて認識されました。国内に約2,000あると言われる活断層のみならず,日本列島の至るところに地殻の歪が蓄積されているということのようです。流動するマントルに乗って移動しようとする地殻の動きについては,高精度な観測技術によりある程度の予測ができているようですが,これによって蓄積された歪がいつの時点でどの場所で開放されるのかという問題になってくると,相当な難問のように感じられます。

 

 さらに,地球の自転速度が緩やかに遅くなってきている影響で,遠心力で膨らんでいた赤道部分が徐々に真球に近い形に変形してきているとのことでもあるようで,これらの複雑な要因が絡み合った地震発生メカニズムの解明にはまだまだ取り組むべき余地がたくさん残されているようにも思います。

 

 一方で,古くから残されている古文書や石碑などにより得られる情報や知見も多くあり,これを活用しようという動きも広がり始めているようです。東日本大震災の際に話題となった貞観地震(869年発生)については,平安時代に編纂された「日本三代実録」に記載された記述により,地震発生からの詳細な被害の状況が読み取れるということですので,このような方面からの情報も踏まえた形で,予知のみならず耐震なども含めた総合的な地震対策が必要と言えます。

 

 今回の鳥取県中部地震における震源に近いところに国宝の「投入堂」があります。倉吉市に隣接する三朝町は,世界有数とも言われる高濃度のラジウム温泉があることでも有名ですが,その温泉街をさらに進んだ先にある標高900mの三徳山を境内としていた三仏寺の奥院として建立されたとのことです。本堂からさらに険しい登山道を辿っていった先にある断崖絶壁の岩窪にへばり付くように建立されたお堂で,間近でその威容に接すると古の修験者たちの魂に圧倒されるようです。

 

 先日の地震による被害がたいへん心配されましたが,投入堂そのものには大きな被害はなかったようす。ただ,その他の建物では支える岩盤にひび割れが生じるなどの被害が出ているようで,現在のところ参拝登山はできない状態とのことです。三仏寺の開山は,飛鳥時代末期の西暦706年と言われていますので,これまでの長い年月に渡って様々な自然災害を乗り越えてきた中で,我々に訴えかけているものが多くあるのではないでしょうか。堅牢な姿を見せ続けている投入堂はその象徴のようにも思われます。

 

 一方,現代社会に生きる我々は後世に何を残していけるのでしょうか。

 

 ここ最近になって急激に聞くようになった“ビッグデータ”は確実に伝えられていくものとなるはずです。大規模な地震観測においては既に様々な取り組みが始められていましたが,ここに来て我々の身近なところでも新たな試みが始められています。その代表的なものとして挙げられるのは,ミサワホームとKDDIが共同開発を行った“GAINET(ガイネット)”です。

 

 これは,戸建住宅の基礎部に設置した地震・加速度センサーで初期微動を検知し,設置住宅の震度・被災度を判定して注意喚起を促すと共に,測定データをクラウドサーバに集約して,その地震情報・被災度データの解析結果を活用していこうという取り組みです。この4月からは既存住宅や鉄骨系住宅への適用拡大も図られているようで,地震対策に向けた“IoT”の具体的な活用が進み始めています。

 

 この他にも,建物の分電盤に設置された“感震ブレーカー”の加速度センサーからデータを取得して活用しようという取り組みなど多様な試みも始まっています。このような動きに呼応して,先月末には“IoT”で得られた“ビッグデータ”を取引するための新市場がオープンするなど,正に目を見張るような展開となっています。このような形で収集された“ビッグデータ”は時代を経るにしたがって大きく膨らみ,そこから得られる知見もますます精度を上げていくことは確実です。

 

 自然災害は我々にとって避けられない大きな試練であり,であるからこそ古の修験者は森羅万象に神霊が宿ると考えたようにも思えます。でもその恐怖に耐えて,当時としてのできる限りの精力を傾けて後世の我々に様々な形での遺産を引き継いでくれました。

 

 投入堂を建立した修験者のように,新たな形での魂を引き継ぐことが必要ではないでしょうか。

| - | 08:00 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark | 昨年の記事