12月となりました。
冬の寒さがそろそろ本格化する頃かと思っていたところに,11月としては異例の積雪に見舞われた関東地方ですが,水戸を含めて多くの地域で観測史上初めてという記録となりました。今年は富士山での初冠雪が例年以上に遅かったとのことでしたが,遠くに望む現在の姿は山頂から麓まで真っ白く輝いている状態です。いよいよ冬将軍の到来というところでしょうか。
寒さのみならず,その前々日には福島県沖を震源とするマグニチュード7.4の地震が発生し,東北地方の太平洋側を中心として最大1.4メートルの津波が観測されました。ちょうど起床時間と重なったこともあり,瞬時に目を覚ます事態となりました。今回の地震は,東日本大震災の時の大規模地震の余震ということのようですが,影響はこの先も長く続くということですので,引き続きの警戒が必要です。
地震と言えば,2004年(平成16年)10月に発生した新潟県中越地震から12年が経過しました。最大震度7を記録した直下型の地震による被害はたいへん大きなもので,当時は山古志村で懸命な努力が続けられた救助活動に世間の耳目が集まりました。現在は長岡市の一部となっている山古志地域において,地震で水没した家屋が水害などで流失するのを防ぐための“防御柵”が先ごろ完成したとのことです。
この地震においては,土砂崩れで川がせき止められ,これによって家屋が水没するという被害を生じており,このうちの2棟を保存することで地震被害の経験や教訓を伝えるためとして整備が行われたとのことです。自然災害は様々な形で我々の日常生活に被害を及ぼすことになりますので,痛ましい震災の経験を次の世代における防災対策の道しるべとして効果的に活かしていくことは極めて重要なことです。
1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災以来の観測史上2度目となる最大震度7を観測したこの新潟県中越地震ですが,災害情報の面で大きな転機となりました。当時急速に普及してきていた“カメラ付き携帯電話”により,被災直後から様々な被害状況を撮影した写真の投稿が地元新聞社に寄せられたとのことです。正に,報道機関とは異なる身近な視点での情報が集められることとなりました。
当初,これを受けた地元新聞社では,この寄せられた多数の情報に関してその信憑性について大いに戸惑いを覚えたようですが,震災後にそれぞれの情報に関する確認を行ったところ,そのほとんどが正確なものであったとのことです。それまでは特定の報道機関が収集するスポット的な情報に限られていましたが,きめ細かい面的展開で詳細な情報を集めることができる状況になったことは非常に画期的と言えます。
但し,災害時ですので全ての面で混乱している状態であり,寄せられた情報の真偽については十分慎重な見極めが必要ですが,この地震を契機として,自治体や研究機関において情報を効果的に集められるポータルサイトの設定や,情報内容の信頼性を高めるための方策などについての検討が進められており,着実に前進してきているように感じます。
一方で,これに合わせて対応が必要な課題として挙げられるのが通信回線の確保と言えます。東日本大震災においては,約2万9千局の携帯電話基地局が機能停止となったとのことです。携帯端末はスマートフォンが主流となり,様々な面での通信機能が向上してきていますが,これによる通信を仲介する基地局の機能停止は,非常に大きな問題となります。
このような携帯電話基地局における対応策として,通信事業者においては非常用発電設備の設置や移動基地局車の配備,さらには半径7キロメートル以上までカバーできる大ゾーン基地局の設置などの対策を実施してきているとのことです。正にこれまでの経験を活かした様々な取り組みが行われてきているようです。
これに加えて,最近注目されているのが自動車を活用した取り組みです。総務省においては,この6月に「非常時のアドホック通信ネットワークの活用に関する研究会」での検討結果を中間報告という形で公表しております。これは,通信システムの搭載により情報通信ネットワークへの接続が可能な“コネクテッドカー”の利用が拡大していることを受けて,スマートフォンの活用も含めた形で災害発生時の情報伝達に利用することを目的としているとのことです。
車載の通信端末やスマートフォンが基地局やアクセスポイントなどの通信インフラを介さずに,端末同士が直接無線通信(アドホック通信)を行うことができるようになることで,より効果的な活用が期待されるところです。自動車の場合,電源が常時確保できる状態であり,走行路に問題がなければ目的の場所まで自由に移動できるなどの利点がある他に,例え渋滞となっても個々の車両間で順番に情報を伝達していくことで,ある程度の広い範囲での通信をカバーできることにもなります。
この研究会では,円滑な通信を確実に行うことができる技術的な検討の他に,情報の改ざん防止などのセキュリティに関する課題を含めた対応策についても検討が行われています。自動運転の実現に向けた取り組みが積極的に進められている状況を考えれば,急速に進化する自動車への期待は,防災対策の面でも非常に大きくなってきていると言えます。今後実証実験も計画されているようですので,これからのさらなる展開を注視する必要があるようです。
元々は1979年(昭和54年)に“自動車電話”として利用が始まった無線電話ですが,これが“ショルダーホン”から“携帯電話”へと進化して現在の“スマートフォン”となり,さらにこの先“コネクテッドカー”という形で活かされることになるようです。技術の進歩は留まるところを知らない勢いです。
ただ,対する自然災害は手強い相手であり,我々も気を抜くことはできません。いざという時のために,着実な取り組みを続けるのみです。