10月となりました。
目まぐるしく変化する国際情勢の動きの中で,なかなか心穏やかという気持ちになれない日々が続いていますが,気づいてみれば朝晩の涼しさが季節の変わり目を感じさせるようになってきました。例年であれば,ようやくしのぎやすくなった秋の夜長をのどかに過ごすことができるはずですが,今年は迫り来るかもしれない脅威により気持ちも冷ややかとなってしまう感じではないでしょうか。
そのような中で,政治の世界では熱い戦いが始まろうとしています。ただ,様々な状況がこれまでとは異なっており,身近に直面する課題に対してどのような具体的な手立てを打っていくかというような前向きで建設的な議論を盛り上げて欲しいものです。それでなくても時代の流れは急速に変化しており,移り変わる情勢に的確に対応した施策を如何に速く展開していくのかということが強く求められている状況であることは明らかです。
時代の流れと言うことでは,最近,電気自動車に代表される“ゼロエミッションカー”の話をよく耳にするようになりました。車も排ガスを発生させないものに切り替える気運が急速に高まってきているようです。ディーゼルエンジン車の性能に不信を抱かせるような事態が明るみとなったことで,ある程度の転換は予測できたものの,現状急速に普及しつつあるハイブリットカーを飛び越えて一挙に加速しそうな勢いとなってきました。
既に欧州各国においては,具体的な目標時期を設定して全ての新車を“ゼロエミッションカー”に切り替えることを決定しているところもあるようで,早いところではオランダが2020年,また,ノルウェーにおいては2025年という期限が掲げられているとのことです。このような動きは地球環境への配慮という将来的に避けられない流れを踏まえたものではありますが,一方で,新たな産業振興という側面からの強い後押しがあることも事実のようです。
正に経済活動におけるダイナミズムが時代の変化をさらに加速していく流れということでしょうか。国際社会における政治的な環境においては,それぞれの歴史的な経緯や自国優先による思惑などの影響で,時代を押し戻してしまうような動きも出てきてしまうようですが,こと経済的な環境においては,国境を超えた共通の合理性により時代転換の動きがますます激しくなっていく事態となっています。
既に経済分野に留まらず,情報通信の分野でも,そして,地震や台風・ハリケーンなどの防災対策の面においても,国際的な協調や協力が避けられない状況であることは明確であり,それぞれの歴史的背景を持つ国家間が,争いではなく,共に手を携えて取り組むことで,地球という限られた生存環境の中で安定した共生が可能となるということは明らかと言えます。
そのような流れからと思いますが,2015年に国連において「人間,地球及び繁栄のための行動計画」(持続可能な開発のための2030アジェンダ)が取りまとめられております。これは地球規模で持続可能な開発を進めていくための必要不可欠な条件として認識すべきことを明確化したもので,その中では,国際社会全体として2030年までに達成すべき“持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)”が17項目に亘って具体的に掲げられています。
この17項目の中には,貧困や飢餓の根絶,健康福祉の促進,教育・学習機会の確保などの全ての人々に関わる切実な願いの他に,雇用確保や経済成長,産業促進やイノベーションの推進,さらには,安全・強靭な居住環境などについて地球環境にも配慮した上で持続可能な形で実現していくことが盛り込まれています。正に,国境を超えて具体的に取り組むべき目標が打ち出された形となっています。
そして,経済活動においては既にこれを踏まえた動きが始まっているようで,企業評価の指標として“ESG”という言葉が注目されるようになってきました。これは,環境(Environment),社会(Social),ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので,従来からの企業業績や財務状況による評価に加えて,この三つの視点での事業戦略における取り組み状況を加味することで,企業としての持続的な成長についても見極めを行おうというもののようです。
既に国際的な資本の移動に関して“ESG”指標が影響を与え始めているという指摘もあるようですので,これからますます各企業において“ESG”経営に関する情報開示が活発化することは確実なようです。“SDGs”という地球規模での共生に向けた目標への取り組みとして,経済活動の分野での“ESG”経営が重要視されていくことで,不安定要因が尽きない国際政治情勢においても良い影響を及ぼして,事態が平和裏に安定化の方向へ向かうことを願うばかりです。
また,我々としてもこのような動きに無縁でいる訳にはいきません。経済活動における企業間取引の利害関係者(ステークホルダー)という側面ばかりではなく,地域社会の持続可能な発展を実現していく役割としても,“ESG”経営に対する認識を新たにする必要があるようです。
我々を取り巻く時代の変化も想像以上に目まぐるしい状況となってきました。地球規模の範囲で,さらには将来へ向けて視野を広げることが迫られていると言えます。