2019年(平成31年)も2月となりました。
昨年末から寒さが本格化してきており,当地では最低気温が連日氷点下となっています。この間降水量がほとんどない状態で,例年であれば窓の結露を気にする季節ですが,今年の場合は起き抜けに湿度計を確認する日々が続いています。このような稀にみる異常な乾燥状態の中で,インフルエンザの猛威に晒されている状態であり,こちらの方も油断ができない状況です。積雪と吹雪に比べればまだ日差しがある分は有難いことですが,体調を維持することに神経を使う毎日です。ここは体に染み付いた免疫力が頼りというところでしょうか。
インフルエンザと共に最近騒がしいのが“統計問題”です。次々と新たな事実も明らかとなってきていますが,これから様々な観点での調査が進められると共に,今回の事態に至った原因究明が行われ,それを踏まえた再発防止に関する議論が巻き起こるものと思われます。昨年に喧しかった“検査問題”に引き続きですので,我々自身も「他山の石」として対応を進めていくことが重要と言えます。
翻って考えてみると,長年続いてきた手順について,先ずはその要領を認識することに集中してしまうということはありがちとも言えますが,その目的やそもそもの考え方にまで遡って確認するということは,基本動作とは言え,やはり十分に意識しておくことが不可欠です。特に,社会情勢が変化し,一方で,様々な手段や道具が登場している時代ですので,これから益々強く要求されるようになっていくのではないでしょうか。“良いものを安く”,“やるべき事を効率的に”,“正確な情報をいち早く”,“必要な対処を迅速に”など,あらゆるところで要求水準が高まっていることは間違いなく,それに伴ってやり方を常に見直すことは避けられない状況です。
その中でも,多人数で関わることになる“組織問題”は,限られた人員で取り組んでいる我々にとって,これから大きな課題になるものと思われます。それぞれの個性と意識を持っている個人が集まって組織としての一体的な動きをするためには,均一な価値判断に基づいて統制の取れた考え方や行動が求められることになります。特に,仕組みやつながりが高度で複雑化された現代社会においては,他に与える影響が想像以上に大きくなっており,正に“利害関係者(ステークホルダー)”を幅広く意識せざるを得ない状態となっているため,その分神経を行き渡らせるべき範囲が拡大してきています。
一見,少人数での取り組みにおいては,統制をとるための活動が容易に行えるように思われがちですが,ダブルチェックへの対応や,検査員の確保などの人員的な問題や,収集できる情報量や,熟練者の経験・知見の範囲が限られるなどの克服すべき課題も多くあります。守るべき法規則や規準・ルールが日々増えていく一方で,残すべき記録や説明責任が今まで以上に求められる状況の中で,限られた人員で取り組むための“知恵”と“工夫”と“行動力”が必要とされているようです。
かつて生産現場においては,“コンカレントエンジニアリング”と言われるような設計から製造,サービスなどそれぞれの担当部門が同時展開で取組みを行う開発手法が注目された時代がありました。また,品質管理においても“全社的品質管理(TQC)”ということで,それぞれの部門が品質向上という観点から取り組みを行う考え方がもてはやされた時代もありました。既に当たり前のようにこのような取り組みが定着している組織も多くあるはずで,これからITやIoTさらにはAIの活用により,今まで以上に効果的な手法が登場し進化していくことが予想されます。
一方で,限られた人員で取り組むことが必要な我々としては,どのような方向性を目指すべきなのでしょうか。一つの考え方としては,弱みを強みに変える工夫というところに解決の糸口があるようです。
少人数で取り組むということで,きっちりとした役割分担による体制作りは難しい面がありますが,一方では,多面的な役割を担える活躍の場が用意されているとも解釈できます。顧客のニーズや困りごとを聞きながら現場でそれを解決していく取り組みは,最近多くの企業で志向されているソリューション営業そのものと言えます。また,これまで間接部門と言われていた経理や情報システムなどの業務についても,近年の法令遵守やCSRなどの社会的な動きを理解する上で極めて有益になってきているようです。
さらには,検査やチェックに頼りすぎるのではなく,一連の工程の中で確実な結果が得られる対処について早い段階で実施できれば,“歩留まり”を高くできるばかりでなく,“プロセス管理”の技を向上させることにもつながるはずです。最近,“ワークシェアリング”という言葉を聞く機会が増えていますが,変化の激しい現代社会を考えれば,業務内容が進化していくことに対応していくためにも“マルチタスク”に適応できるような能力開発が必要とされてくるようにも感じられます。
また,中小企業において追い風となっているもう一つの方向性がIoTやAIなどの活用です。これまでであればこれらのシステム環境を整備するためにはある程度の企業規模と財力が必要でしたが,無線を始めとした通信インフラや,データを保存するサーバ,さらにはSaaS(Software as a Service)などのソフトウェア利用が手軽に活用できる状況になっています。さらには,AIについてもクラウド型サービスが広がってきており,これからその利便性は急激に向上していく動きです。
我々が直面している状況を冷静に考えれば,世の中の変化は中小企業にとっての脅威という面ばかりではなく,これを克服することで大きなチャンスに結び付く流れとなっているように思います。
そのためにも,これからの新たな時代における役割について,我々自身が明確にすることが求められているのではないでしょうか。